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10年以上前ですが、中国・内蒙古自治区の満州里、新疆ウイグル自治区のウルムチに行ったことがあります。

 満州里の中心部から自動車で15分も走れば、見渡す限りの大平原。大陸に吹く初夏の風に身を任せて、はるか遠くの緑濃い丘陵に目を向けると、ところどころに白いパオが点在していました。パオとは隣国に住む同じモンゴル族が使うテント式移動住宅です。

ウルムチは建設ラッシュでした。町中に響く槌音は、改革開放経済が進む中国各地で聞かれるものでしたが、北京や上海と違うのは、町の商店の看板がウイグル文字と略式漢字の併記になっていること。町を歩くウイグル人の顔立ちは彫が深く、漢民族とはまったく違う印象です。

対ロシア国境貿易に沸く満州里には漢民族の商人が大量に流入しており、モンゴル族の比率がどんどん小さくなっている。ウルムチも同様だが、ここではそれに反発するウイグル人のテロが起こっており、中国政府が警戒の目を光らせている。

現地でそんな話を聞いて、はたして、様々な言葉、宗教、生活習慣をもった十数億人の民を抱えた中国が、いまの体制のままやっていけるのだろうか? と疑問をもったことを、チベット問題で揺れる中国のニュースを聞いて思い出していました。

今年夏の北京五輪を前に、世界の中国に対する目はますます厳しくなっています。しかし、中国は外国の批判に容易に耳を貸しそうにありません。

ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議した西側各国が1980年のモスクワ五輪参加をボイコットしても、ソ連は侵攻をやめませんでした。ソ連軍がアフガニスタンから撤退したのは、それから8年後です。長期化した戦争によって国民の厭戦気分が広がり、国内経済が疲弊してしまったあげくの決定でした。

イラクに戦争をしかけたアメリカしかり。大国が外国に文句を言われて、路線を変更した例は歴史上、ほとんどありません。ましてや中国は「面子」にこだわる国柄。ダライ・ラマも言っていたように、中国に「五輪開催国に相応しい振る舞いをせよ」と言い続けるしかないのではないか(ちなみにマガ9編集部には、来日中のダライ・ラマ14世に、ランニングと短パン姿で「ダライ・ラマさんは日本国憲法9条についてどう思いますか?」と問うて、チベットの法王をうならせたツワモノがいます)。

面子をつぶさないよう、なだめ、おだて、すかしながら、チベットの人々にはエールを送って、彼らに国際社会から孤立していないことを知らしめる。かなり面倒くさいですが、大国の国民ではない私たちは、長期戦を覚悟して中国と向き合わなくてはならないと思います。

たとえば、かつての西ドイツは、1970年代以降、ヨーロッパの安全保障のために核大国ソ連と粘り強い対話を続けました。そうした長年の努力が、現在のヨーロッパの基盤をつくったといえます。

いかに中国と付き合っていくか――これは21世紀の日本とアジアにとってとても重要な課題だと思うのです。
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