マガジン9条のブログ
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様々な面から憲法問題について考えるサイト「マガジン9条」の運営に関わるスタッフが綴る徒然ブログ。
ja
2009-11-11T10:52:04+09:00
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壁崩壊から20年
ベルリンの壁が崩壊したのは1989年11月9日。あれから20年が経ちました。先日、短い期間でしたが、ベルリンに滞在中、ドイツの多くのメディアが当時の特集を組み、ベルリンの象徴であるブランデンブルク門ではU2のコンサートが行なわれるなど、華やかなものでした。
ただ、当時のベルリンにいた者...
ベルリンの壁が崩壊したのは1989年11月9日。あれから20年が経ちました。先日、短い期間でしたが、ベルリンに滞在中、ドイツの多くのメディアが当時の特集を組み、ベルリンの象徴であるブランデンブルク門ではU2のコンサートが行なわれるなど、華やかなものでした。
ただ、当時のベルリンにいた者としては、あの日の夜は「新しい時代の幕開け」という感じではなかった。むしろ、それ以前に盛り上がった旧東独市民の民主化運動が萎んでしまうのではないかという不安の方が強かった。東ベルリンでは、通りや電車の中で見知らぬ人同士が「この国をどうするか」という議論を闘わしていたのです。あんな光景はいままで見たことがありませんでした。
ベルリンの壁崩壊直後に始まった旧ユーゴスラビアの民族紛争は、私のなかでは、壁崩壊後のドイツ統一に向かう人々のただならぬ熱狂とどこかでつながっています。
現在では壁の跡もわからないくらい変わったドイツの首都ですが、戦後、変わらず残っているひとつが写真のガイザーヴィルヘルム記念教会です。第二次世界大戦の爆撃で壊れたままの姿で残されているこの教会は、ベルリンの「原爆ドーム」といえるかもしれません。
演劇の勉強をしに東ベルリンで生活を始めた私が、「チェックポイントチャーリー」という、歩いて渡る東西ベルリン国境を越え、初めて西ベルリンに入ったのは、壁の壊れる1年前でした。晩秋で日はとっぷりと暮れ、真っ暗な人気のないベルリンの壁の周辺。そこを沿って、歩いていると、途中で、ナチス親衛隊本部跡地や、戦争の傷跡の残る旧ドイツ帝国議会(現在のドイツ連邦議会)に出くわします。そんなとき、私はタイムスリップしたかのような感覚に襲われ、国境の照明塔の下、1人で黙々と「壁打ちテニス」をしている若者の姿に、シュールレアリズムの世界を見るような錯覚を覚えたのでした。
その後、西ベルリンを延々と歩いたはてに、たどり着いたのがガイザーヴィルヘルム記念教会。町の中心部に立つこの建物を前にした私は、しばらくその場から動けませんでした。
壁のあったころのベルリンを知りたい方には、ヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン天使の詩」をお勧めします。西ベルリンのディープな世界を感じたければ、麻薬におぼれる少女を描いた「クリスチーネF」を。ただし、これはあまりに暗い映画なので要注意です。作品中、一時期、西ベルリンに住んでいたデヴィッド・ボウイのコンサートシーンがあるので、ボウイ・ファンにはたまらないかもしれませんが。
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コルヴィッツ
2009-11-11T10:52:04+09:00
マガジン9条編集部
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マガジン9条編集部
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マガ9のブログパーツ
マガ9のブログパーツを制作中。
右カラムにそのサンプルを表示してみました。
再来週の公開を目指しています。
皆さんのブログでぜひ使ってもらえたらと思ってます。...
右カラムにそのサンプルを表示してみました。
再来週の公開を目指しています。
皆さんのブログでぜひ使ってもらえたらと思ってます。]]>
図案チーム
2009-11-02T05:17:50+09:00
マガジン9条編集部
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妻の貌
東京ではユーロスペースで公開中のドキュメンタリー作品「妻の貌」を観ました。監督は川本昭人さん。妻のキヨ子さんの姿をビデオにおさめた作品です。
キヨ子さんは64年前、女子挺身隊として働いていた広島の工場で被爆し、後に甲状腺癌と診断されます。自らも辛い診療を受けながら、寝たきりの義母を見るキヨ子さ...
妻の貌」を観ました。監督は川本昭人さん。妻のキヨ子さんの姿をビデオにおさめた作品です。
キヨ子さんは64年前、女子挺身隊として働いていた広島の工場で被爆し、後に甲状腺癌と診断されます。自らも辛い診療を受けながら、寝たきりの義母を見るキヨ子さん。二重三重の不条理を見る気がしました。
映画は全編、静かな時間の流れとともに進みます。子供や孫との交流はホームビデオのよう。ただ、こうした日常のなかに、原子力爆弾という圧倒的な暴力の影が付きまとう。
映画は声高に平和を叫ぶでもなく、厳しく原爆を糾弾するのでもない。理不尽を身体全体で引き受けたキヨ子さんに寄り添うように、カメラは回ります。観る者も、監督と一緒に彼女に寄り添うのが、一番しっくりくる見方のように思えました。
ユーロスペースでは、ただいまモーニングショーで上映中です。
あれから64年目の夏、この作品を観て、戦争と家族について考えてみてはいかがですか。
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コルヴィッツ
2009-07-31T16:52:56+09:00
マガジン9条編集部
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東方政策
マガ9対談(蓮池透さんと森達也さん)、読み応えありました。こんな刺激的な対談が読めるマガジン9条って、すごいなー、スタッフ、がんばってるなーと、私なんか、すっかり一読者として感心した次第です。
お2人も言っておられたように、北朝鮮への経済制裁が拉致被害者を取りかえす手段になるとは、私も思えませ...
お2人も言っておられたように、北朝鮮への経済制裁が拉致被害者を取りかえす手段になるとは、私も思えません。
ついついドイツと比較してしまうのですが、冷戦時代の西ドイツでは、戦後長らく続いた保守政権からドイツ社会民主党主導のそれに交代すると、「東方政策」が始まりました。
当時のヴィリー・ブラント首相は、東ドイツをはじめとするソ連・東欧諸国に対して敵対姿勢を貫くだけでは現状は何も改善されないと考え、緊張緩和をめざす外交を展開したのです。それを彼の外交ブレーンだったエゴン・バールが「歩み寄りによる変革=東方政策」と名づけます。
東西ドイツ間の往来の改善、ソ連およびポーランドとの軍事的緊張の緩和などを実現した東方政策は、当初は西側同盟国から疑惑の目で見られていました。アメリカの安全保障担当補佐官だったヘンリー・キッシンジャーはブラントの頑固なまでの東側への接近に不快感を示したし、ドイツ国内でもブラント外交は「ソ連に対する弱腰」と批判されました。
しかし、ブラント、そして彼の後を引き継いだヘルムート・シュミットらドイツ社民党政権の歩み寄りと外交・経済関係の緊密化が、平和裏のドイツ統一につながったことは明らかです。
こうした歴史は、対北朝鮮外交にも参考になるのではないか。
安倍元首相や中川元金融担当大臣、そして麻生現首相といったいわゆる「対北朝鮮強硬派」は、自国民に向かって他国の悪口を言っているだけで、具体策を練っているとは思えません。彼らのコメントを聞いていると、自分の家族に対して、他の家の親父の悪口を言っているような、卑近なイメージしか湧かないのです。
ヴィリー・ブラントは1913年、北ドイツ・リューベックで、(世襲とはまったく無縁の)私生児として生まれました。1933年4月、ヒトラー政権を嫌いノルウェーに亡命。この時以来、彼は本名のヘルベルト・フラームから「ヴィリー・ブラント」を名乗ります。戦後は西ベルリン市長を務めましたが、その時代にベルリンの壁が構築。彼は常に全体主義と向き合ってきた政治家でした。
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コルヴィッツ
2009-07-30T16:46:29+09:00
マガジン9条編集部
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未熟すぎる政治家たち
都議選後の自民党のごたごたを見ていると、この国の権力の中枢にいる人が、日本で一番未熟なのではないかと思えてなりません。
自分たちが圧倒的多数で選んだボス(麻生太郎)だろ。最後まで守れよ!
私は、麻生太郎という人間を支持しません。「外交の麻生」など、とんでもない。恥ずかしいから外遊には出な...
自分たちが圧倒的多数で選んだボス(麻生太郎)だろ。最後まで守れよ!
私は、麻生太郎という人間を支持しません。「外交の麻生」など、とんでもない。恥ずかしいから外遊には出ないでほしいと思っているくらいです。
でも、いまみたいに「麻生おろし」とかやっている人間は、もっとひどい。
総裁選の時点で「この人(麻生)、トップにしたら、やばいんじゃないか」という場面が多々、ありました。たとえば名古屋での演説で、岡崎市での洪水被害に触れて、「岡崎だったからよかったけど、ここ(名古屋)で(洪水が)起こったら大変よ」とか。危機意識をきちんともっている人間であれば、あの時点で「総理大臣にしたらまずい」と思うはずです。
案の定、首相になってからも舌禍のオンパレード。
それでも側近は厳しい苦言を呈することなく、支持率が下がって、地方選で負けたころになって騒ぎ出す。情勢が不利と見るや、ケツをまくるような大人、好きですか?
こんなにも腹が立つのは、自民党の先生に立派な野党政治家になってもらいたいから。けれど、いまの彼らをみたら、とてもきちんとした監視役を果たせるとは思えない。それだと困るんです。
前にも書きましたが、自民党政権を見ていると、崩壊直前の東ドイツを連想します。当時の私は「権力って、こんなに脆いんだ」と思ったものでした。
いや、東ドイツ政権の方がいまの自民党よりましか。
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コルヴィッツ
2009-07-16T19:23:04+09:00
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オヤジ系は細事を軽視する
私が子供のころ、父は労働者演劇運動をしていました。単純化して言ってしまえば、演劇を通して、世の中をよくしていこうとするムーブメントです。いまではほとんど死滅してしまいましたが。
定期公演が近くなると、父は家に帰らなくなります。芝居というのはお金がかかりますから、給与から家に入れるお金も少なくな...
定期公演が近くなると、父は家に帰らなくなります。芝居というのはお金がかかりますから、給与から家に入れるお金も少なくなる。そこで両親は、というか母からの一方的な攻撃になり、母の最後の決まり文句はたいてい、
家族も幸せにできないで、何が世界の平和よッ!
これを言われると父はぐうの音も出ず、黙るしかありません。私は、母のとどめの一撃を聞きながら、「正論だけど、世の中、正論だけじゃないからなあ」と父に同情していたのですが、最近、勇ましいことを言う政治家や、日本や世界について朗々と論じる評論家の人たちを見るにつけ、母の気持ちがわかるようになりました。
郵政民営化がどーだ、こーだと口角泡を飛ばす政治家の人たちって、郵便局に行ったことがあるんだろうか? 深刻な顔をして派遣切りを憂うニュースキャスターは、テレビ会社が下請けの制作会社を安いギャラでこき使っているのを知っているのだろうか?
足元のことをすっ飛ばして、天下国家を論じてしまう人を観ると、私は「オヤジ」だなあと思ってしまう。えてして「オヤジ」は、日常の小さな問題に対する解決能力が低いから(これは自戒を込めて)。
宮崎県知事の東国原さんの最近の言動ぶりに、私は「オヤジ」っぽさを感じています。地方分権を実現するために国政に出るって、どうなんだろう? 地に足つけて、地元で起こる問題を解決していくというのは、彼にとっては地味すぎる仕事なのだろうか?
地域の人々の陳情を聞き、議会との折衝を重ねるなど、いろいろな細事を、部下を使いながら片付けていく。いずれ国政にと思っているのであれば、こうした経験をもっと積んだ方が、長い目で見ればいいのではないかと私は思うのですが。というか、長い目なんてないか。
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コルヴィッツ
2009-06-26T21:03:20+09:00
マガジン9条編集部
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マガジン9条編集部
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オペラグラス
その人は成田空港内で、鞄からおもむろにオペラグラスを取り出して、両目にあてました。
「な、何やってんですか?」
「飛行機の発着時刻のボード見ようと思って……」
確かに、搭乗者用入り口の上に設置されている大きな黒の時刻表を、オペラグラスで眺めています。その姿を私が横で見ていると、
...
「な、何やってんですか?」
「飛行機の発着時刻のボード見ようと思って……」
確かに、搭乗者用入り口の上に設置されている大きな黒の時刻表を、オペラグラスで眺めています。その姿を私が横で見ていると、
「ぼく、目が悪くてさ、よく見えないんだよね」
聞けば、海外出張のときは必ずオペラグラスを持参しているとか。
「校庭に白線引くための石灰があるでしょ。小学校のとき、同級生にそれを目に入れられてさ、それから視力が落ちちゃったんだ」
ひどい話だ。
「映画なんてさ、字幕が読めないから、ずいぶん行ってないなあ」
というか、眼鏡、買ったほうがいいんじゃないですか?
「うーん、でも、眼鏡かけると、見たくないものまで見えちゃうからねえ」
私は相槌を打ちたいような、打ちたくないような。でも、その人がいつも穏やかなのは「いやなもの」を見てないせいなのだと納得しました。「ときどき鋭い指摘をする」のは、余計なものを見ないから、本質をつけるに違いない、とも。
彼の世界観に興味がわきました。
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コルヴィッツ
2009-06-05T14:16:55+09:00
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北朝鮮の誤算
北朝鮮の弾道ミサイル発射と地下核実験の狙いは、アメリカに自らを核保有国として認めさせることにあるといいます。が、北朝鮮政府はオバマ政権を見くびっているのではないか。前政権と同列に扱っているふしがある。大量破壊兵器のないイラクに侵攻し、核をもった北朝鮮へのテロ国家指定は解除するという、ダブルスタンダー...
大統領就任後のオバマ氏を見ていると、私にはどうしてもゴルバチョフ登場時と重なってしまう。
内に民主化・自由化、外に新思考外交をうたったゴルバチョフは、当初、西側世界から懐疑的に見られていました。
ソ連共産党書記長にそんなことができるのか?
ところが、ゴルバチョフ外交は、ベルリンの壁を崩壊させるにいたりました。ゴルバチョフがクレムリンのトップに立ったとき、いったい誰がそれを予測したでしょうか。
オバマ氏を「しょせんウォールストリートの代理人」とシニカルに言う人もいます。ゴルバチョフも「しょせんソ連共産党のエリート」と思われていました。
そもそもペレストロイカが始まったのは、ソ連経済がアフガニスタン侵攻の泥沼化と硬直した中央指令経済体制で疲弊していたから。アメリカ経済はいまイラク侵攻の失敗と金融資本主義の崩壊で疲弊している。
北朝鮮当局は、核廃棄を訴えたオバマ氏のプラハ演説を思い出すべきです。その実現がいつになるかはわかりませんが、彼は本気だと思います。
ブッシュ氏と同じような対応をオバマ氏にしたら、北朝鮮は自分の首を絞めることになる。政権の崩壊が近づくと私は思います。
アジアで大きな変化の予感がするのに、「日本も核武装を」と主張するわが国の政治家にいたっては、金正日同様、時代から取り残されているといわざるをえません。
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コルヴィッツ
2009-05-27T23:54:43+09:00
マガジン9条編集部
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キヨシローが死んじまったぜ
5月2日、忌野清志郎が亡くなりました。去年2月、武道館での完全復活ライブの後、喉頭がんが骨に転移し、治療に専念していると聞き、心の準備はできているつもりだったのですが、いまも動揺が収まりません。
マディのおやじさんが死んじまったぜ。
いまから20年以上前、ある雑誌のインタビューでキヨシロ...
マディのおやじさんが死んじまったぜ。
いまから20年以上前、ある雑誌のインタビューでキヨシローが開口一番、こう語りました。
マディって、誰?
それがブルース界の重鎮、マディ・ウォーターズのことだと知った私は、さっそくマディのLPを聞き始めました。
キヨシローが敬愛するミュージシャンだから。
その後も、オーティス・レディング、アレサ・フランクリン、サム&デイヴなど、キヨシローが好きな音楽を聴いていました。
ただ、大人になって時間の余裕を失っていくと、聴くもののほとんどがキヨシローの曲になっていきました。
カラオケへ行くと、RCサクセションやキヨシローのソロの歌ばっかりで、ヒンシュクかって。。。
いま「スローバラード」を聴いたら、泣いてしまいそう。
キヨシロー、お疲れさま。そして、ありがとうございました。
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コルヴィッツ
2009-05-05T07:27:09+09:00
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球場には熱狂よりも幸福感が似合う
日本のプロ野球の2009年度シーズンが4月3日に始まりました。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で日本が2連覇! で盛り上がった余波の中での開幕です。
私も、前回のWBC同様、テレビの前で日本代表を応援していました。プエルトリコやベネズエラといったカリブの強豪チームと日本代表の試合が...
私も、前回のWBC同様、テレビの前で日本代表を応援していました。プエルトリコやベネズエラといったカリブの強豪チームと日本代表の試合がなかったのは残念でしたが、アメリカ移動後の第2ラウンド、決勝ラウンドでの度重なる韓国戦では、テレビ画面に向かって歓声や悲鳴を上げることも。
そんな私が言うのも何ですが、WBCを報じる日本のマスメディアは騒ぎすぎ。
3月5日の東京ラウンド開始から同月24日のロサンゼルス・ドジャースタジアムでの決勝戦まで、連日「サムライ・ジャパンは命を賭けて戦い」に臨み、いずれも「絶対に負けられない」なんて、いくらなんでも酷だ。選手や視聴者ひっくるめて煽る姿勢からは、「大本営発表、いまだ健在」という言葉が浮かんできました。
本来、野球はもっとのんびりしたスポーツです。実際にスタジアムに足を運ぶと、その「のんびりさ」を体感できます。
現在、東京に住んでいる私は、ときどき神宮球場へ出かけます。試合観戦だけでなく、ビールやコーラ、ホットドッグなどを手に、デーゲームなら青空、ナイターなら夜空を見上げ、季節の風に身をゆだねる楽しみを味わうためです。
周囲を見渡せば、ネクタイを緩め、ビールを飲んで脱力しているサラリーマン風のおじさんや、初めて球場に連れてきたらしいガールフレンドに一生懸命、野球のルールを説明する青年。あるいは、意味もなく、客席の階段を駆け上がる、開放感に満ちた野球帽の少年たち。試合開始を待ちきれず、鳴り物を鳴らすライトスタンドを陣取る応援団も微笑ましい。こうした野球ファンのなかに身を置いていると、私は平和な気分に浸れるのです。
この点、東京ドームは苦手。屋根付きの閉じた空間には、「今日は球場にでも行ってみるか」とふらりと入れるような、ゆるい雰囲気があまり感じられません。
プロ野球のシーズンは長い。春から秋までの約7カ月間、12球団は互いに何度も試合を繰り返します。熱狂や興奮は優勝がかかった終盤戦、その後のクライマックスシリーズや日本シリーズまで待たねばならず、そこにいたるまでは「昨日は勝った、今日は負けた」とささやかに一喜一憂する日々が続きます。
野球というのは動きの少ないスポーツです。チームスポーツのわりに、基本はピッチャーとバッターの1対1の勝負だし、その2人とキャッチャーを除けば、残りの守備の選手7人はじっとボールの動きを見つめている。攻撃側にいたっては、バッター以外の8人は自分の打順がくるまでベンチで待っている。
野球のフィールドには広さの統一基準がありません。両翼の短い球場をフランチャイズにするチームのバッターはホームランを打ちやすく、広いスタジアムのチームのピッチャーは点が取られにくい。こんな不公平があるわりには、出場する選手は必ずバッターボックスに立てるという「機会平等」が保障されている。民主的かつアバウトにできているのです。
WBCやサッカーワールドカップ、あるいはオリンピックなど世界が注目する国際大会は、国内リーグの地味な試合の組み重ねの上に成り立っています。日常のリーグ戦はマスコミの演出の対象にはなりにくく、退屈な時間になることも珍しくありません。それでもリーグ戦が「もっている」のは、球場に集まった観客たちが醸し出す幸福感ではないか。でなければ、1試合約3時間、それを毎週5~6試合、年間130回以上も続けられるわけがないと私は思うのです。
日常からちょっと逃避したいなと思ったとき、球場へ足を運ぶことをおすすめします。
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コルヴィッツ
2009-04-14T17:37:20+09:00
マガジン9条編集部
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