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週刊『エコノミスト』(12月4日付)連載「政流観測」で、中村啓三さんは、先の福田訪米での共同記者発表について次のように書いています。

「米国の関心事は、米国産牛肉の輸入拡大、イランの核開発、北朝鮮問題の順で、日本で大騒ぎしているインド洋の給油活動再開は、法案審議を見守る以外にないと極めて冷静な態度だったといえる」

私はこれを読んで、小泉政権時代から感じていた「日本の自民党政権は東ドイツの政権党だったドイツ社会主義統一党の末期に似ているのではないか」という思いを強くしました。政治イデオロギーは正反対ですが、日本のアメリカに対する態度と当時の東ドイツのソ連に対するそれに、内政の都合によって国際情勢を見誤っている共通点が見えたからです。

東ドイツは建国以来、ソ連を社会主義の兄弟国、運命共同体とみなしていました。ところが、ソ連ではゴルバチョフの登場後、国内では民主化、対外的には緊張緩和が進んでいました。

でも、東ドイツはソ連のペレストロイカ(建て直し)を真似ようとはしませんでした。自国で民主化を行えば、自らの権力がもたないと思ったのでしょう。しかし、政権維持のためにはソ連の後ろ盾が欠かせない。こうした事情から、東ドイツはペレストロイカをやんわり否定しながら、ソ連へのラブコールは欠かさないという、分裂症的な状態になっていったのです。

1989年10月7日の東ドイツ建国40周年記念の日、最大級の国賓として東ベルリンに招かれたゴルバチョフは、国家元首のエーリヒ・ホーネッカーはじめ、ドイツ社会主義統一党の幹部たちにこう言ったそうです。
「遅れてくる者は、歴史に罰される」
その後、東ドイツでは民主化運動が勢いを増し、約1ヵ月後にベルリンの壁が崩壊したのは周知のとおり。

小泉前首相はかつて「日米関係がよくなれば、よくなるほど、アジアとの関係もよくなる」と、およそ国家元首とは思えない底の浅い発言をしました。しかも、自分は同時に靖国神社への参拝を繰り返した。靖国遊就館の展示が、中国や韓国だけでなく、アメリカにも決して納得できないものであるにもかかわらず(日本人がスミソニアンでの原爆投下爆撃機、エノラ・ゲイの展示の仕方に納得できないように)。

こうした外交のデタラメさ加減は、福田内閣の新テロ特措法案への執着に引き継がれているように思えます。インド洋での給油ができなくなると、国際社会から孤立する? 与党は主張しますが、先の中村氏のコラムを読むと、アメリカの覚えめでたくして、政権を維持しようと思っているだけではないのか。

こうしたやり方で失敗したのが、東ドイツの対ソ外交でした。それは最終的に自国の消滅を招きました。「運命共同体」であるはずのソ連は当時、すでに東ドイツを飛び越えて西ドイツとの経済関係を強めていたのです。これを、ソ連をアメリカ、東ドイツを日本、西ドイツを中国に置き換えてみたら……。

同じ図式が東アジアでも当てはまるとは限りませんが、いまの自民党を見ると、政権党が末期症状に陥っているように思えてならないのです。
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